写真集「ヤズディの祈り」制作

2016年11月14日その他

赤々舎から出版予定の写真集「ヤズディの祈り」ようやく値段が定価2800円で決定。200ページを超えると思います。発売は今月終わりか12月初め。「イスラム国」とか「難民問題」「フォトジャーナリズム」、、、私にとっては身近な存在ではあっても多くの日本人にはそうではないかもしれない。そういった、ついつい説明的になりすぎてしまいそうな今回の取材の写真ですが、いわゆる紛争地域の報道写真にありがちな「インパクトのある写真」は最初から削除しました(別にそういう写真を否定しているわけではありません)。ただ、もっとじっくり写真を見て色々と想像をめぐらせて欲しいから。デザイナーの松本久木さんと姫野さんから「写真のページは写真だけで見せよう」と提案していただき、文章のページにも細部までこだわっていただいている。写真の編集はスムーズに進んだけど、言語でこんなに苦戦するとは。。。日本語以外に、クルド語クルマンジーのラテン文字表記、イラクのヤズディの人々が使うクルド語クルマンジーのアラビア文字表記、ドイツ語、英語をページ、パートによってどう使い分けるか、、、。ヤズディの人々が暮らしてきたイラク北西部シンガルのあの地域の複雑な社会的、歴史的な背景があるからこそ、どの言語に翻訳するべきか悩みに悩んだ。。。『言語と人間性 コンフリクト社会に見る言語行為と多言語』(下の写真)の著者で、今イラクの大学で教えられている言語学者のアブドゥラッハマン・ギュルベヤズ先生に日本語からの翻訳をお願いしています。世界各地で暮らすヤズディの人々にも届くようにと祈りながら作っています。

『言語と人間性 コンフリクト社会に見る言語行為と多言語』(松本工房)↓

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メディアでのAla Kachuu(キルギスの誘拐結婚)の取り上げ方について

2016年09月17日その他

キルギスの誘拐結婚(アラカチュー)のことがテレビで取り上げられるたびに、私が実際に番組に関係していなくてもその反響で色々と視聴者の方からメッセージやメールなど連絡をいただきます。それは素直に有り難いと思のですが、テレビでアラカチュー(誘拐結婚)が取り上げられたびに思うのは、アラカチューが単純に紹介され、誘拐されて女性が泣き叫んでいるところばかりが象徴され、こんなにも複雑で私も含めた部外者が意見するのが本当に難しいこの問題を、まるで「キルギスの奇習」みたいな伝え方ばかりされているのが本当に残念…。誘拐されたキルギスの女の子たちも、誘拐されてそれで人生が終わったわけではなく、その後色々な人生を歩んでいて、そういうところまで取材してほしい。キルギスの男性の中にも女性の合意がない誘拐婚はなくした方がいいと強く思う男性もいれば、女性の中にも誘拐婚を受け入れている女性たちもいます。同じ家族の中にも弟は恋愛結婚で兄は誘拐家婚、その両方の結婚の形が家の中でも自然と受け入れられていることもありました。私が取材をしていた時には、誘拐結婚後に自殺をしてしまった女性の遺族も、離婚した夫婦も、きっかけは誘拐婚だったけど今はすごく幸せに暮らしている夫婦も色々な夫婦に会って話を聞いて、それでもどう伝えるかもの凄く迷い、この問題と向き合い続けた結果、私自身は「女性の意志を無視して無理やり結婚するこの慣習はなくした方がいい」と思うようになりました。単なるもの珍しさだけで、単純にセンセーショナルに紹介して「うわ〜、ありえない国だ」と一時的に勝手に盛り上がって終わって欲しくない。他の国で起きている問題、特にそれが文化やその地域独特な価値観に基づいて行われている問題を扱う取材をしたり、番組を作る時に、単純で一方的な伝え方をするのではなくて視聴者にもっとその問題について慎重に考えさせるチャンスを与えるような番組を作って欲しいし、私も慎重に取材をしなければいけないと思う。