メディアでのAla Kachuu(キルギスの誘拐結婚)の取り上げ方について

2016年09月17日その他

キルギスの誘拐結婚(アラカチュー)のことがテレビで取り上げられるたびに、私が実際に番組に関係していなくてもその反響で色々と視聴者の方からメッセージやメールなど連絡をいただきます。それは素直に有り難いと思のですが、テレビでアラカチュー(誘拐結婚)が取り上げられたびに思うのは、アラカチューが単純に紹介され、誘拐されて女性が泣き叫んでいるところばかりが象徴され、こんなにも複雑で私も含めた部外者が意見するのが本当に難しいこの問題を、まるで「キルギスの奇習」みたいな伝え方ばかりされているのが本当に残念…。誘拐されたキルギスの女の子たちも、誘拐されてそれで人生が終わったわけではなく、その後色々な人生を歩んでいて、そういうところまで取材してほしい。キルギスの男性の中にも女性の合意がない誘拐婚はなくした方がいいと強く思う男性もいれば、女性の中にも誘拐婚を受け入れている女性たちもいます。同じ家族の中にも弟は恋愛結婚で兄は誘拐家婚、その両方の結婚の形が家の中でも自然と受け入れられていることもありました。私が取材をしていた時には、誘拐結婚後に自殺をしてしまった女性の遺族も、離婚した夫婦も、きっかけは誘拐婚だったけど今はすごく幸せに暮らしている夫婦も色々な夫婦に会って話を聞いて、それでもどう伝えるかもの凄く迷い、この問題と向き合い続けた結果、私自身は「女性の意志を無視して無理やり結婚するこの慣習はなくした方がいい」と思うようになりました。単なるもの珍しさだけで、単純にセンセーショナルに紹介して「うわ〜、ありえない国だ」と一時的に勝手に盛り上がって終わって欲しくない。他の国で起きている問題、特にそれが文化やその地域独特な価値観に基づいて行われている問題を扱う取材をしたり、番組を作る時に、単純で一方的な伝え方をするのではなくて視聴者にもっとその問題について慎重に考えさせるチャンスを与えるような番組を作って欲しいし、私も慎重に取材をしなければいけないと思う。

Joop Swart Masterclass(世界報道写真財団) ワークショップ@オランダ

2016年01月29日その他 海外

随分と時間が経ってしまいましたが、昨年の写真活動の中でとても刺激になったワークショップをご紹介したいと思います。

私が昨年11月に参加したJoop Swart MasterclassはオランダのWorld Press Photo(世界報道写真財団)が毎年行っているワークショップで、既にプロとして活動をしている32歳までの写真家を選び、さらに写真の分野で活躍する編集者や写真家、本のデザイナーなど6人のマスターを招待し、アムステルダムで写真漬けの7日間を過ごす、というワークショップです。

IMG_1637
(参加者とマスターのグループ写真)
私は写真家になった頃から、このワークショップにはいつか絶対に参加したい!と思っていたので、昨年ようやく参加する機会ができ、本当に嬉しく思いました。ドキュメンタリー写真をやっている写真家やフォトジャーナリストが参加するワークショップは世界中にあるのですが、このワークショップは参加費や滞在費、渡航費、食費など全てWorld Press Photoが負担してくれます。ただ、参加するためには、まずはノミネートされる必要があります。世界中にいるノミネーターにより、ノミネートされた写真家は4月頃にポートフォリオ(作品)やワークショップへの参加志望動機をWolrd Press Photo に送ります。今回のポートフォリオ作品は30枚までと決まっていたため、私は組写真(2つのストーリー)と単写真を合わせたものを送りました。その後に審査があり、ノミネートされた写真家の中から最終的に12人が選ばれることになります。
参加が決まった12人は、ワークショップが開催される11月までの間に決められたテーマのフォトストーリーで取材をすることになります。今年のテーマは「Invisible」。それぞれの解釈でInvisibleにあったテーマで撮影し、11月に写真をオランダに持って行きます。

今回、ワークショップが開催された場所はアムステルダムにある、「Hotel not Hotel」というホテルでこちら⇒
http://www.hotelnothotel.com
ホテル全体を貸し切って、私を含む12人の参加者やマスター、World Press Photoのスタッフが寝泊まりをしながら、ホテルのロビーのような場所で、写真について議論をしたり、意見を交換したり、レクチャーをしたりという1週間を過ごします。

Joop Swart MasterclassのHPはこちら⇒
http://www.worldpressphoto.org/academy/joop-swart-masterclass

昨年の参加者は私(日本人)の他に、フランス、イラン、ブラジル、イギリス、ベネズエラ、パレスチナ、エジプト、ドイツ、ブルガリアから12人の写真家やフォトジャーナリストが参加しました。

マスターには以下の6人

*Claudine Boeglin- マルチメディア(写真、音声、ビデオなどを融合したビジュアル作品)のプロデューサー
*Tanya Habjouqa- パレスチナに拠点を置く、女性のフォトジャーナリスト。私が所属するイギリスのエージェンシーPanos Picturesに彼女も所属しています。

*Meaghan Looram- ニューヨーク・タイムズ紙のフォト・エディター

*Jonathan Torgovnik- 南アフリカに拠点を置く、フォトジャーナリスト。ルワンダの虐殺を取材した写真集が日本でも赤々舎から発売されています。
http://www.amazon.co.jp/ルワンダ-ジェノサイドから生まれて-ジョナサン-ドーゴヴニク/dp/490354558X
*Teun Van der Heijden- オランダに拠点を置くブックデザイナー
*Donald Weber- VIIフォト・エージェンシーに所属するカナダ人写真家

11月1日~7日まで開催された、ワークショップでは6人のマスターによるプレゼンターション、参加者一人一人がマスターと一対一になって、行うポートフォリオレビュー、ドキュメンタリー写真の歴史、取材中そして発表活動をする上での倫理の問題、エディティング(写真編集)の方法、これからのフォトジャーナリズムについて、それぞれの取材やストーリーのコンセプトをどう組み立てていくかなどについて、朝から夜遅くまで情熱的なディスカッションが続きます。体力は使っていないはずなのに、夕方6時頃にはすっかり疲れきってしまう、という毎日でした。

IMG_1648
(写真の編集作業の様子)

IMG_1638

(朝食の時間)

IMG_1641
(部屋の入り口:ワークショップ会場になったホテルにはたくさんの本や写真集があるのですが、それぞれの部屋は本棚の奥になっています…)

IMG_1645
(アムステルダムの美術館で絵画を鑑賞しながら、写真表現との比較をしたりする時間もありました)

IMG_1663
(ニューヨークタイムズ紙のフォト・エディターMeaghanによるプレゼンテーション)

6人の各マスターたちは、これまでの仕事での経験や生き方、今取り組んでいる仕事についてなど、本当に丁寧にそしてオープンに私たちに共有してくれました。

最終日には参加者それぞれが持ち寄ったフォトストーリーを編集し、その結果を発表しました。
写真というのは撮影するだけでなく、膨大な枚数の写真の中から何を選び、選んだ写真をどう繋げて編集し最終的に組写真として発表するのか、それは写真を撮影することと同じくらい大切なプロセスだと思っています。一週間かけて、マスターや他の参加者の意見を聞きながら最終的には自分で編集を行います。

とても有り難いと思ったのは、それぞれの写真家の個性や視点を大切にしてくれるということ。マスターと参加者の関係が決して先生と生徒という関係ではなく、同じ写真の仕事に携わる同志として、一枚の写真を否定したり、マスターのそれぞれの好みによって参加者の写真を批評したりするのではなく、私たちのテーマや取材対象に対する思いをじっくり聞いてくれて、その上で私たちの個性を尊重しつつ、全体的に組写真として並べた時にどう伝えるかということを大切にしながら写真を選ぶ作業を一緒に進めてくれたということです。

マスターも参加者も皆、真剣に写真に向き合って活動している人たちで、とても理解が深く、それぞれのユニークな経験をシェアし合いながらの濃密な一週間を過ごすことが出来ました。

IMG_1682

(最終日のプレゼンテーションの様子)