大洪水の爪あと
2010年7月、パキスタン北西部で発生した大洪水の被害は、南北を流れるインダス川流域中部のパンジャブ州や、南部のシンド州各地に広がった。パキスタン建国以来最悪と指摘される大洪水により、ピーク時には国土の3分の1が水に沈み、国民の1割以上の2000万人が被災。犠牲者は1800人を超えた。洪水発生直後の8月11日から始まったイスラムの断食月ラマダン中には、避難民キャンプで多くの被災者たちが断食を行った。40度を超える猛暑の中、食料や安全な飲み水が十分に行き届かない、厳しい環境の中でさえ、多くの被災者たちは日中何も口にしないという光景があった。パンジャブ州のムザファルガー村は発生から1ヶ月が過ぎても水位が下がらず、照りつける太陽で熱湯のように暑くなっていた。